第80章 選んだもの
そして、何度も同じ事に悩み続けたそれは、ついに。くるりとひっくり返ることになる。
ふらりと一歩、キリはシカマルに歩み寄る。
キリ「私……」
先のことを怖がって、今を捨ててしまうのは、もうやめにしよう。
ただ真っ直ぐに、想いを伝えてくれたシカマルに、自分も真っ直ぐに答えたい。
キリ「私も、あなたの事ずっと前から……好きだった」
シカ「!!」
その返答が、シカマルはまるで予想外だったのか、目を丸く見開いていて。
そんな彼にも、愛しさがこみ上げて、ふと笑みがこぼれる。
キリ「あなたが、好き」
その気持ちいっぱいに、そう伝えれば、今度はきちんと理解してくれたようで、広場にいた時のキリのようにシカマルは狼狽えていた。
シカ「え、あ……まじかよ?」
嘘だろと呟いて、信じられない様子のシカマルに、こちらは本心を伝えているのに失礼なことだと笑う。
だが、それならば。こちらも何度だって伝えようではないか。
彼がキリにそうしてくれたように。
キリ「好き」
シカ「っ!」
本当なのだとそう言えば、赤くなった顔を隠すように、シカマルは片手で口もとを覆った。
シカ「あー……やべぇ」
そう言って、その場にしゃがみ込んだシカマル。それに合わせてキリも同じように座って、真っ赤になったその顔を覗き込んだ。
キリ「好き」
シカ「っ、……俺も好きだ」
ふわりと、互いに目を細めて、幸せが二人を包み込んだ。
シカ「あー……悪かったな」
キリ「?」
突然の謝罪に、何のことだとキリが首を傾げると、シカマルはバツの悪そうな表情を見せた。