第80章 選んだもの
それは、今。
キリの頭の中と心を、いっぱいにしている人物の姿で。シカマルを見るだけで、馬鹿みたいに鼓動がその速さを増した。
シカ「やっと捕まえた」
「速ぇっての」と、文句を言う彼に掴まれたその腕が、ひどく熱を帯びたのを感じる。
シカ「キリ、お前の返事をまだ聞いてねぇ」
真っ直ぐに見つめるシカマルの瞳が、キリを射抜く。
キリ「返、事……?」
シカ「おう」
その答えは、ずいぶん前にカカシに導かれて出したものがあるはずだ。
この感情は押し殺してしまおうと、これまで奮闘してきたはずだ。
でも。
どうしようもなく嬉しいこの気持ちも、どうしようもなく愛しいこの気持ちも、一体どこに消化しろと言うのか。
キリはきゅっと、言葉を飲み込んだ。
この答えは一度、考え抜いて決めたこと。
それならば、貫くべきなのか。それとももう一度、考え直してもいいものなのか。
キリ「……」
ぐらぐらと不安定な地盤の上で、心も大きく揺さぶられる。
シカ「キリ、さっきも言ったけどよ」
すると突然かかった声、キリは無意識に下がっていた視線をあげる。
シカ「俺は、お前のことが好きだ」
キリ「!」
シカ「俺はまだお前より弱ぇし実力も足りねえ。だから、頼りねぇと思うかも知れねぇけどよ」
ゆっくりと、そう話すシカマルに、キリの心音は大きくなっていく。
シカ「俺に、付いて来てくれねぇか」
その言葉に、キリはぎゅっと強く手を握った。