第80章 選んだもの
第80話 選んだもの
突然のシカマルの告白に、どうしたって心が冷静に考えてはくれなくて。
ドクドクと早鐘のような鼓動を感じながら、キリは広場から逃げるように駆け出した。
キリ「彼も……私を……っ」
好きだと、確かにそう言った。
それは勘違いなんかじゃ済ませる事が出来ないぐらい、そう言う意味合いではないのではないかなんて、そんな疑いをかける余地も無いほどに真っ直ぐに紡がれた想い。
彼はこんな自分を、選んでくれたのだ。
それも、アカデミー時代というずっと前から。
自分たちの想いは、その時から繋がっていたのだ。
キリ「~~っ」
ボッと顔に、熱が集まるのがわかる。
キリ「……どうしよう」
この感情をどう表せばいいのかわからない。
ただどうしようもないほどに、嬉しい。
驚きや、信じられないという感情もあるが、なによりも嬉しくて仕方がないのだ。
頭の中で、もし隣にいるシカマルと、恋人同士になる事が出来たら。そんな浅はかな考えを何度巡らせた事があっただろうか。
絶対に叶わないと思っていたその気持ちは、もうずっと自分に向いていたのだ。
ましてや、あんなにもキリを大切に想っていてくれたのだと思えば、これほど嬉しい事そうはないだろう。
こんな幸せがあっていいのだろうか。
冷静になれと、一旦落ち着かなくてはと、何度も自分に言い聞かせるが、ぐるぐると先ほどのシカマルの言葉が、キリの心をさらっていく。
渦巻く感情を胸にただ闇雲に、里内を駆けていれば、突如、その腕を掴まれた。
キリ「!!」
その主の方を見てみれば、ドクンッと大きく心臓が跳ねた。
シカ「キリ」