第17章 自覚して加速
キリのことが気になっていたんだろう。
これまで、自分の遠く管轄外にいたキリに関心がわいたのだ。
そしてこの日、自分はキリとの距離が縮まったと思い込んでいた。
しかし翌日、キリに挨拶をすればものの見事にスルーされた。
いやいや、昨日は普通に同じ時を過ごすことが出来たのだと。翌日も勇気をもってキリへ挨拶をしてみたが、同じように無視を決め込まれて、シカマルの心は折れた。
同時に、キリと少し仲良くなれたと勘違いしていた自分が酷く恥ずかしくなったのをよく覚えている。
キリの中では、自分はその辺のやつらと一緒で、それ以上でも以下でもなかったのだ。
シカ(………はー)
シカマルは苦い顔をしながら、どこまでも広がる青空を見つめる。
よくよく思い返してみて、現段階での分の悪さが果てしないことがわかった。
そして、シカマルの恋心が芽生えたのは、思っていたよりもずいぶんと早かったこともわかってしまった。
シカ(……とにかく、話がしてぇ)
自分は、キリを知らなさ過ぎる。
キリと話をして、そして何も知らない彼女のことを知りたかった。
キリが、自分の両親や里の仲間を殺めるような奴には、とても見えない。
キリがどこかつらそうな、悲しそうな顔をするのは何故なのか。
見舞い時に病室で、キリが自分は薬が効かない体質だと言っていた。
これ以上は口を挟んでくるなとキリから露骨な視線を向けられたので、その時は追求しなかったが。
いつか、それらを何でも聞くことが出来る日は来るのだろうか。
感情が見えないキリの笑った顔を見てみたい。
抑揚のないあの声が揺れるのを聞きたい。
シカ(会いてぇな)