第17章 自覚して加速
その後、話も終わってキリは授業に戻ろうとした。
どうせ今戻ってもイルカに怒られる。なら次の授業までこうして空を見上げていても一緒だと言えば、キリはすとんと再び隣に座った。
正直、そう言ったところで、キリは授業に戻るだろうと思っていた。
戻らなかったとしても、まさか自分と一緒にいる事を選ぶとは思っていなかったので、こいつもこんなところがあるんだなとおかしくて笑ってしまった。
二人して空を見上げていた時、ほとんどお互い喋る事はなかったが、その沈黙は決して嫌なものではなくて。
とてもゆるやかな時間が過ぎた。
キリもいつものピンと張り詰めたような雰囲気ではなく、少し穏やかな空気をまとっていたように思う。
「あっ」と小さく聞こえたキリの声に、どうかしたのかと聞けば。
キリは、はじめは花の形をしていた雲が、しばらく別の雲を見ている間に、猫の形に変わっていると言った。
そんな風に人間味のあるキリの言葉を聞いたのは初めてのことで、こいつにも可愛いところがあるんだなと思った。
化け物だなんだと言われていたが、話をする事も出来るし、案外普通じゃないかと。
変な噂があろうが何だろうが、キリはシカマルと同じ12歳で、同じ人間なのだと、思った。
シカ(俺は、あの時から……)