第78章 強行突破
尋常じゃないほどの羞恥に、身体中が熱を帯びている。
今までも、何度か恥ずかしい出来事を作り出してきたものだが、今日この時を超える羞恥は、おそらく人生でもうないだろう。
もう、ないはずだ。
ああ、ないことを願いたい。
絶対に無いと、確信を持てないところが怖い。
そんな中で、同じように顔を赤くしているキリ。道連れにしてしまったキリからの返答を待っていれば。
キリは、目にも留まらぬ速さで印を組み終える。
シカ「!」
次の瞬間、ボンッと煙だけをその場に残して、キリの姿が消える。
シカ「………」
一同「「「………」」」
それが瞬身の術で、キリが雲隠れしたという事に気付くのに、ほんの少しの時を要した。
一同(((逃げた……!!!)))
シカ「あー……」
やられた。と、シカマルは、ぽりぽりと頭をかく。
アスマ「くくっ、お前が好きで仕方ねぇ女が逃げてったぞシカマル」
シノ「追わなくていいのか」
いの「そうよ! シカマル! 早く追いかけなさいよ!」
サクラ「あんたが手離すからでしょ!」
そんな激励とも野次とも言えぬ声が、そこかしこから飛び交った。
シカ「はーあいつが本気で逃げたら捕まらねぇよ」
そう返せば、周囲から大ブーイングが起こったことに、シカマルは苦笑する。
今のキリは、完全に本気で逃走をはかっていた。突然だったこともあるが、どの方向へ行ったのかすらも感知出来なかった。
それに追いかけたい気持ちももちろんあるが、それと同じぐらい痛いほどキリの気持ちが理解出来る。
シカ(……そりゃ逃げたくもなるよな)
ざわざわと周りから聞こえてくるのは、自分たちの話ばかりで。こんな中で告白をされては、キリもさぞ居たたまれなかったことだろう。