第78章 強行突破
そんな中に、一体いつ来たのか酒を片手に随分と楽しそうな綱手と、優しく見守るような眼差しを向けてくるシズネまでいるではないか。
それを見渡したシカマルは、バッとそちらに背を向けた。
そして、今、己のしでかした事を理解する。
そういえば、今日、なんのためにシカマルはここに来たのだったか。
答えは、他里合同任務の説明を聞くためだ。多くの忍が集められたここにくる前、アカデミーの頃以来の勢揃いだなんて会話が成されていただろうに。
何が、冷静な部分の頭の中ではだ。
冷静な部分など、今の今まで一つも無かった。周りに気をかける余裕もなければ、冷静さなんてカケラもない。
ただキリだけに、必死だった。
そして、その結果。
同期が勢揃い、関わりの深い上忍や、アカデミー時代の先生、火影、父親までがいるこの状況で。
シカ(この中で俺は、キリに……)
【俺が好きなのはお前だって言ってんだよ!!!!!】
そう叫んだわけだ。
さらには、それだけではおさまらず、積もり積もった想いを、キリにぶつけ続けていたわけだ。
シカ「~~っ」
みなに背を向けたことで、キリと再び向かい合ったシカマルは、キリとぱちりと視線が混じる。
耳まで真っ赤になったキリを見て、シカマルもボッと顔を赤くして、ゆでダコのようになった二人が出来上がる。
シカ.キリ「……」
ここで、ようやくキリの声が聞こえた。
キリ「は、離して……お願い」
真っ赤な顔と小さな声で、そんなことを言うキリに、シカマルはパッとその腕を解放する。
キリのお願いには、弱いのだ。
シカ「お、おう。悪い」
キリ「っ……私……」