第78章 強行突破
シカ「キリ……」
返事のないキリの態度に、堰を切ったように溢れ出した想いの数々は、次第に不安へと変換されていく。
一度、勢いをなくした勇気の代わりに、冷静な部分の頭の中では、これがキッカケでキリとの今後に支障が出たり、もう前のような居心地の良い関係がなくなってしまうのではという恐怖が襲う。
今まで何度も、伝えようと思った事はあった。
それでも、何故踏み止まる事になったかと言えば、これが原因である。
キリを支えたい。その隣に居るのは自分がいいと、思ってはいる。
だが、何よりもキリを失う事が怖かった。
友人や家族のような今の関係も、幸せな日々であったから。情けないと言われるかもしれないが、そこから先への一歩を酷く躊躇させたのだ。
だが、それでも。
シカ「……キリが好きだ」
何を言われたって、変えられないのだから。自分でも意味がわからないぐらいに、惚れている。
シカ(頼むから……なんか言ってくれ…)
一言でもいいから、なにか。
小さな沈黙に、募る焦燥と不安に、どくどくと、心臓が音を立てる。
カカシ「あー……んんっごほん」
シカ「!」
ためらいがちに聞こえてきた、わざとらしい大きな咳払いに、そちらの方へ振り向けば、少し頬を朱色に染めたカカシがへらりと笑う。
そして、何やら手でジェスチャーをされてシカマルは首を傾げた。
シカ「?」
こっち、こっち、回れ、回れ、おそらくそんな意味が込められたその動きに、シカマルはよくわからぬまま、足を進める。
シカ「………っ!?!!」
そしてその先にあった光景は、シカマルの予想外なものだった。
キリの前へと回り込んだシカマルが見たものは、空いている方の手で、顔を覆って、耳まで真っ赤に染まっているキリの姿。
シカ「は? ……え!?」
キリ「っ……」