第78章 強行突破
キリの言動に一喜一憂して、勘違いして気に病んだり、時には恥をかいたり。
こんなに激しい感情の浮き沈みは、自分のような人間には珍しい。
キリに恋をしてからというもの、それは頻繁に起こり、恋愛とはなんて面倒なものなのだろうと、心の底から思う。
シカ「恋愛なんて、こんなめんどくせぇ事、お前以外とやるつもりはねぇよ」
だがそんな面倒など、些細なことだと思えるぐらいに、キリを愛しく思うのだから、自分も大概重症である。
シカ「俺がこんなにも惚れんのは、後にも先にも、キリだけだ。お前しか見えねぇ」
キリ「……」
シカ「お前は、俺の事をそんな風に見た事はねぇかも知れねーけど」
好きだとそう言った時の、キリのぽかんとしたあの表情。
あれは、そんな事は、全く予期していなかった顔だろう。
シカ「俺はお前を諦めるつもりは少しもねぇ」
キリが同じように、シカマルを想っていなくても、既に簡単に捨てられるようなものではないのだ。
シカ「キリ」
伝われと、願いを込めてそう告げる。
シカ「お前の事が好きだ」
キリ「…………」
途中からは、もうずっと。
キリからの返答は得られていなくて、キリは少し俯いて、だんまりを決め込んでいる。
行かないでくれと掴んでいるこの腕に、離せと抵抗する力はもう感じないが、キリは今どんな顔をしているのだろうか。
もしかしたら、酷く困った顔を……嫌な、顔を、しているのではないかと思えば、胸がぎゅっと締め付けられる。
シカ「頼むからなんか……言ってくれよ」