第3章 アカデミーへ
アカデミーでは、朝から不穏な噂が飛び交っている。
シカマルは眉をひそめて、ため息をついた。
アカデミーに来たはいいものの、まだ眠くて1番後ろの席でもう一眠りしようと思っていたが、どうやら失敗だったようだ。
「ねー聞いた?アカデミーにすっごい子が来るんだって」
「えっなになに?」
シカ(うるさくて眠れやしねー)
結局寝ることが出来ないのなら、前でチョウジたちといた方が良かった。
シカ(今更動くのもめんどくせー)
はぁ、とため息をついて顔を伏せる。
「あっ、私も知ってる、あれでしょ?おばけみたいな長い髪でいつも人の事睨みつけてくる怖い子でしょ」
「そう その子!」
「へー、女の子?見た目が怖くてすごいの?」
1人、2人と次々に噂のもとに集まってくる女たち。知っている者は得意げに、知らない者は興味津々で早く早く、と次の情報を得ようとする。
シカ(ったく、女ってのはどーしてそんなに噂話が好きなもんかね)
寝ることを諦めて、体を起こしてふわぁと大きなあくびを1つ。
シカ(大体、こーいうのはこーやって人から人に伝わる度に話がでかくなんだろーが)
頬杖をついて呆れていると、この集団でどうやら中心になっている女が1人、ひときわ顔を輝かせていた。
「それがね、見た目だけじゃないの!!」
え、そうなの?とざわめく女たちと、シカマルもその続きに耳を傾ける。
しかし、話は中々続けられない。
自分しか知らない事に気を良くした女は、ふふんと得意げにどうしようかなーと勿体ぶっている。
シカ(早く言えよ、気になるだろーが)
出し惜しんでおいて、周りが続きを聞かなかったらそれはそれで、この女は怒りだすのだろう。全く、シカマルにとって女というのは理解し難いものである。
「絶対、内緒よ?」
女は、少し声をひそめて告げる。
「それがね、その子、自分の親を殺したらしいの」
あまりの事の重さに、周囲の女たちも目も口もまんまるに開いて。
シカマルも一瞬固まってしまった。