第78章 強行突破
以前、キリと二人で遊んだあの一日も、朝から晩まで。
それどころか、約束をしたその時から、ずっとそわそわと心が落ち着かなくて、待ち焦がれていた。
迎えに行く朝は、ガラにもなく緊張して。帰り道には、まだ一緒に居たいと、名残惜しみながらキリを見送って。
そして、先ほども思い返したように、その日は本当に、一日楽しく終えたのだ。
サクラに言われるその前からシカマルも、なんだか少し良い雰囲気なのではないかと、そんな事を思ってしまっていた。
もしかしたら、初めて二人で来た店は、常連になったり、いつか今日を懐かしむ事があったりするのではないかなんて。
そんな風に浮かれまくっていた自分が、酷く恥ずかしい。
シカマルがこんなにも、キリのことを考えていたところで。
そんな想いは何一つ。
キリには伝わっていないのだ。
なにせ、自分は、他の女を勧められるほどなのだから。
シカ(……ふざけんなっての)
その時、ぷつりと、何かが切れる音がした。
ああ、もういいと。その何かが完全に開き直って、その感情は、ついに悲しみを超えて溢れ出る。
シカ「………き、だ」
キリ「?」
シカ「……き、…て…っだよ」
キリ「何?」
小さく聞き取れないシカマルのそれに、キリは小首を傾げて、こちらに歩み寄った。
そんな悪意の無い言葉で、今まで散々シカマルのガラスのハートに傷を付けてくれたウルトラ鈍感女のキリに、シカマルはスゥッと大きく息を吸い込んだ。
シカ「俺が好きなのはお前だって言ってんだよ!!!!!」