第78章 強行突破
そういえば以前、ヒナタもシカマルと同じような状況になっていた。
ヒナタとキリとシカマルの三人で修業をしていて、昼食の弁当を食べていた時。
同じように自分のオカズをヒナタに差し出して、突然のあーんに顔を赤らめていたヒナタの姿を思い出す。
無意識にそんな事をするものだから、こちらはその不意打ちにやられるのだ。
(あ? ……おい待て。これ俺だけじゃなくて、他の男にもやるんじゃねぇか)
おそらく、キリは確実に、それも普通にやるだろう。
これは非常にまずい。家訓の見直しを、早急に求める必要があるのではないか。
モヤモヤと広がる気持ちに、そんな馬鹿な事を考えていれば、キリの声で現実に引き戻される事になる。
【良いお店ね】
【だな。俺も初めて来た】
アスマに教えてもらったのだと言えば、キリは「なるほど」と頷いた。
アスマから、お勧めの店を聞く際。
本当に散々からかわれまくって、こき使われた。
それなのに、アスマから与えられる情報は、味は美味いが汚い居酒屋や、女が男に過剰な接客をしてくるいかがわしい店ばかり。
ついに我慢の限界が訪れて、もういいとアスマに背を向けて歩き出した時に、笑いながら言われたのが、この店だった。
愉快極まりない様子でにやにやとタバコを吸っているアスマの姿に、小さな殺意が芽生えて、シカクや紅に教えてもらった店から選ぶと、そう言い捨てて、部屋を出たのだ。
しかしながら。
任務帰りに、近くを通ったため、店をちらりと覗いてみる。
すると、落ち着いた雰囲気で、肩を張らずにいられる綺麗な店内。
爆笑していたアスマの姿が浮かんで、そこそこ苛立ったが、結局はここに決めたのだ。
料理は今日初めて食べたが、シカマルもキリも舌鼓をうち、しかも値段も手頃という完璧なアスマのチョイスに腹が立つ。
シカマルたちの年齢や、性格などに合わせた店を教えてくれたであろうアスマに、何故だろうか。
感謝よりも、苛立ちが勝ってしまうのは。