第78章 強行突破
【同じ手にはもうかからないわ】
タッと逃げ出したキリに、思わず苦笑する。
どうや以前、不意打ちでタッチした事を忘れてはくれないらしい。
そして、このタッチ、いや衝突事故は何も鹿だけの話ではない。
子供のそれのようにきゃっきゃっと遊んでいては無理だ。全力を尽くさなくては、それぞれ捕まらないのだ。
キリの能力はもちろんのこと、鹿もさすが普段森に住んでいるだけある。地の利を生かして、それはもう逃げる。そして人とは違うその機敏な動きに、こちらも翻弄されてしまう。
さらに、いつからか狙っているターゲットが中々捕まらない場合は、もう一人が鬼に協力して二人で捕まえにかかるという暗黙のルールが出来た。
鹿がシカマルを追う時、そのサポートに入ったキリの動きがえげつない。
鹿は突撃してくるわ、キリからワイヤーが飛んでくるわで、この森には敵しかいなくなる。
そして、全神経を集中させてキリから逃げ続けていた時、ついにキリに刀を抜かれた時には、腕の一本は持っていかれるかもしれないと覚悟した。
さらには鬼に協力してサポートについているといっても、油断すれば、鬼からタッチされるという気の抜けなさ。
下手な修業よりも、よっぽど難易度が高いこの遊びを4時間ほど続け、シカマル達は鹿が群れに戻るのを見送った。
鹿を見送った後は、2、3日前からシカクや、恥を忍んでアスマ、紅、にまでお勧めの飯屋を聞いてまわったのちに選び抜いた店で、昼食を取った。