第78章 強行突破
シカ「あいつらの飯のテンションに俺一人でついてくのも大変なんだよ」
「だから次は一緒に来てくれ」と、そう言えば、キリはこくりと頷いて返す。
キリ「次はいつ? 休みが合えばいいけど……」
シカ「あー俺らの班はしばらく帰りが早い任務ばっかだからよ。お前に合わせる」
嬉しいお誘いだと、穏やかに語るキリ。
そんなキリを見つめているシカマルの心中は、穏やかとは程遠い。
シカ(……やべぇ)
いくら抑えようとしても、その意思に反して頬が緩んで仕方がない。
シカ(ぜってぇ今だらしねー顔してんだろうな)
自分でも、にやにやと顔がだらけきっているのがわかる。
以前、キリと一日遊びに出た時も、終始会話は弾んで、本当に楽しい一日だった。
その日の朝、キリの家に迎えに行って、鹿のいる森へ行き、久々の再会に、例のごとく異常なスピードで爆走してきた鹿と合流。
その後は体力有り余る今が全盛期の若鹿と、4時間ほどノンストップで、タッチという名の衝突事故による骨折と常に隣合わせの鬼ごっこを楽しんだ。
鬼ごっこを思い出すと、また頬が緩んでしまう。
…………………………
【危ない!!!】
そんなキリの声に振り返れば、茂みの中から飛び出して来た鹿の姿。
【やべ、っ!!】
これは避けきれないと、重心を落として真正面からそれを受け止めれば、勢いに押されてシカマルは地面をえぐりながら5メートルほど後退する。
【くっ……はぁっ】
ようやく勢いが止まれば、無事にタッチを終えて、次はシカマルが鬼だと、目を輝かせて逃げて行く鹿。
【大丈夫?】
【おー……なんとかな】
いてて、と腕をさするシカマルを心配して、覗き込むキリ。
そこへ、今だ! と言わんばかりに、キリへ手を伸ばして、タッチしようとした手は、華麗に躱された。
【【…………】】
二人の間に沈黙が流れて、ははっと空笑いをすれば、にこりとキリに微笑み返される。