第77章 後退と前進と
シノ「話を、聞くぐらいは出来るが」
てくてくと前を向いて歩いてるシノは、幾分優しい声音でそう落とした。
キリ「……答えは、もう出てる」
いつ刺客に襲われるかわからないキリのこの状況。
そんなキリが、シカマルとどうこうなるつもりは無い。
それは、シカクの一件で、よりいっそう強く思った。
キリと親密になればなるだけ、巻き込まれる確率は上がる。
そして。
キリ(失う悲しみも……)
シカマルには、末永く幸せになって欲しい。
どう間違っても、同郷達を殺め、故郷を追われて。刺客によって襲われる日々を過ごしているような女が、隣にいるわけにはいかない。
シカマルの隣には、キリなんかよりも。
キリ(彼女のような愛らしい人が……)
【キリさん! この薬はどうでしょうか!】
いつも人のために、目を輝かせる医療員の姿が浮かぶ。
キリ「だから、本当にもう大丈夫。あとは時間が解決してくれるはず」
断言出来ないことが、情けないが。
小さく痛む胸も、気のせいだと心の中で繰り返す。
本当にそれが平気になるまで、何度だって言い聞かせよう。
そんなキリを見て「そうか」と頷いたシノはもうそれ以上、何かを告げる事はなかった。
…………………………
ーーカカシの悩み事ーー
ある日の上忍待機所。
カカシ「ねえアスマ」
アスマ「あ?」
カカシ「俺、可愛いお嫁さんになれると思う?」
アスマ「ごふぉあっ、ごほっ、ぐ、ごほっ」
アスマ「はぁ!?」
カカシ「料理教わりに行こうかな……」
カカシ(ヨシノさんおふくろの味、教えてくれるかな……)
アスマ「おいお前何言って」
カカシ「稼ぎはあるんだけどね。やっぱり俺が家庭に入るべきだよね」
アスマ「………」
ふぅ、とアンニュイな雰囲気を醸し出すカカシと、今後こいつと仲間でいる事を真剣に検討しようと決めたアスマであった。