第77章 後退と前進と
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キリ「付き合ってもらってありがとう」
シノ「礼を言う必要はない。俺が勝手に付いていっただけだ」
キリ「この後は修業へ?」
シノ「ああ。そのつもりだ」
キリ「迷惑でなければ、一緒に修業どうかしら」
シノ「……それは、面白い提案だな。こちらからも頼む」
キリ「ありがとう」
「じゃあ行きましょう」と修練場へと足を向けるキリの後に、シノも続いて歩く。
シノ「キリ」
キリ「?」
くるりと振り返れば、こちらをじっと見ているシノの姿。
シノ「まだ、悩みは解決していないのか」
キリ「っ……」
その言葉に、キリは息を詰まらせる。
キリ「……どうして?」
シノ「表情が少し暗い」
「以前よりはずっとマシにはなっているが」と淡々と告げるシノに、キリは眉を寄せて困ったように微笑する。
自分では、普通にしているつもりであった。
実際に、前よりもずっとつらくはない。
彼女の口からシカマルの名前が出た時。ほんの少し、思うことはあったが、それも僅かなもので。
その後は普通に会話をしていたし、先ほどの検査結果の時は特別、何もなく終えた。
なのに。
まさか、それを察知されるとは、微塵も思っていなかった。
キリ「いえ、あれはもう解決したわ」
シノ「………」
キリ「心配をかけてごめんなさい」
シノ「言いたくないなら、無理には聞かないが」
キリ「本当に気のせいよ」
気のせいだと言っているのに、一切逸らしてくれないシノの視線が、刺さること刺さること。