第77章 後退と前進と
『病院へ来た時に、よく私の話し相手になって下さいます』
年の近い人と話せるのは嬉しいと、医療員は告げる。
シノ「……無理にそうしているわけじゃない」
『ありがとうございます』
ふふふ、と嬉しそうに微笑む医療員に、シノも少し笑みを見せた。
そういえば、以前シノと医療員に病院で遭遇した時も、医療員はシノがよく話してくれると言っていた。
なるほど、この二人は親しい間柄であるらしい。
和やかな二人の雰囲気がそう語っていた。
そんな中で、医療員はハッと自らの持っている紙に、視線を落とした。
『すみません! 検査結果の報告をさせて頂きますね』
話を脱線させてしまったと謝罪する医療員に、こちらが連れて来たから、俺が付いて来たからだと二人がフォローを入れる。
キリ「報告お願いするわ」
『はい。まず、以前4種類の薬を使用させて頂いた時のものですが、結論から言えば、どれも治療効果は得られませんでした』
こくりと頷けば、医療員のきゅっと握った手に力が入る。
『……すみません、結局新薬も効果が無くて』
「何も成果が見られず私の力不足です」と、医療員は声を落とした。
キリ「……効果のない治療薬がわかるだけでも、施術の時に随分違ってくると思うけど」
いつもキリのために動いてくれて、こちらこそ申し訳ないと告げれば、医療員はとんでもないと首を振る。
『必ず、キリさんに合う薬を見つけます! なので、もう少しお付き合い下さい』
再び意気込む医療員に礼を告げて、キリはシノと二人で病院を後にする。