第77章 後退と前進と
その後は、他愛のない会話を交えながら進行された。医療員の要領が良く、手際の良い検査は無事終了する。
『今回の結果は、後はまとめるだけなのですぐに出せますが、どうなさいますか?』
医療員は二十分ほどで、結果をまとめたものを渡すことも出来るし、次回でも構わないと告げる。
キリ「なら、今日貰って帰るわ」
『わかりました。すぐにまとめて来ますね』
そう言って、立ち上がった医療員を引き止めれば、彼女は不思議そうな顔を見せた。
キリ「その間、外へ出てもいい?」
『何か用事があるのなら、次回にお渡ししましょうか』
「急ぐものではありませんから」と言う彼女に、キリは小さく首を横に降る。
キリ「いえ。今日は天気が良いから、少し散歩でもしようかと思って。駄目なら中にいるわ」
そんなキリに、医療員は窓の外を見て、納得したように笑顔を見せる。
『そういう事なら、お好きにして頂いて構いませんよ。本当に気持ちが良い天気ですね』
キリ「ええ、ありがとう。二十分後には戻るわ」
…………………………
病院の外へと出たキリは、真っ青な空を見上げて、一度大きく伸びをする。
キリ「ふぅ……」
以前のように、あの病室や空間が息苦しく思う事もなければ、心に暗く影が覆って、ざわざわと煩わしい感情が渦巻くこともない。
キリ(本当に綺麗な空……)
それでも、やはりどこか緊張したり、本当の平常心ではいられていない気がした。
その証にこの青空の下に来た途端、開放感が得られてしまう。