• テキストサイズ

ささめごと -ながい夢- 【NARUTO】

第77章 後退と前進と





第77話 後退と前進と



定期検査のために、病院へ訪れたキリは、案内された病室で一人、彼女の到着を待っていた。

すると、そう長くは待たずして、待ち人は現れる。


『キリさん!』

キリ「!」


久しぶりに聞いた医療員の彼女の声音と、短くしばられた髪がピコピコと揺れる愛らしいその姿。


キリ(……良かった)


長く中断していた検査。

病院へ来るまで、少し緊張していたが、もうその姿を見ても苦しくはない。


キリ「久しぶりね」


『もうお身体は大丈夫ですか? すみません、私……キリさん達が大変だと聞いていましたが、何も出来なくて……』


自分の医療技術では、到底助けになれなかったと、彼女は泣きそうな顔で眉を下げた。


キリ「ありがとう。その気持ちだけで充分」

本当に、良い子なのだと。そう思う。

こうして付き合いが出来てから、彼女の悪いところなど、見当たらない。


キリ「そんな顔をしないで。私もシカクさんも、もう大丈夫」


そう言えば、眉を下げながらも本当に良かったと、安心するような笑顔を見せた医療員。

『シカマルさんも、お元気ですか?』


シカマルの名が出た途端、恋する女の子の表情になる彼女は、素直に可愛いと思うし、そんな彼女が羨ましいとも思った。


キリ「……ええ、彼も元気にしてるわ。今日は任務があって来れなかったけど」


良かった。普通に返事をする事が出来る。

これも以前のような、じりじりとせり上がってくる胸の痛みを伴うことはない。

ただほんの少しだけ、返答に間が出来たのは気のせいだと、自分に言い聞かせた。


/ 1018ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp