第76章 これが幸せ
シカ(ちげぇっての。そういうのじゃねーよ)
いの(それ以外に何があるのよ!)
ぐいぐいと食い付きの激しいいのに、シカクとキリが任務に出た時にシカクが家族全員に買ってくれて。キリがそれを選んでくれたのだと、一から説明すれば、ようやくいのは落ち着きを見せる。
いの(そういうことねー)
なーんだと、少しつまらなさそうな表情を見せたいのは、ちらりとシカマルの腕に視線を向ける。
いの(でも良かったじゃない。キリが選んでくれて、しかもお揃いでしょー。あんたも嬉しいんじゃないの?)
「あんたアクセサリーなんて普段つけないもんね」と言えば、シカマルはぽりぽりと頬をかいて、視線を逸らした。
シカ(あー……まあ、そりゃ嬉しくねぇわけねーけどよ)
そんな不器用な幼馴染みの照れ隠しに、いのはつい笑顔をこぼした。
カカシ「幸せそうだねー、シカマル」
いの「きゃあっ!?」
シカ「うおっ!?」
突如背後に現れたカカシに、二人はびくりと肩を竦ませた。
いの.シカ「カカシ先生っ!?」
一体どこから現れたのだと、二人が目を見開いていれば、カカシはスッと入り口付近のテーブルを指差した。
カカシ「どこからって……さっき入り口から入って、そこの席に座ってたけど」
いの.シカ(全然気付かなかった……)
どうやら、先ほどいのたちが入り口付近の人を堰き止めていた時、その列の最後尾にカカシがいたらしい。
常日頃エロ本を片手にしていても、さすが上忍。まるで気が付かなかった。
カカシ「お揃い、いいね」
「それ」と、シカマルの腕に視線を送れば、シカマルは気恥ずかしそうに頬を染めた。
シカ「あー聞こえてたんすか」
カカシ「まあね」
そう顔を赤らめているシカマルに、カカシは目を細めているが。
聞こえていたもなにも、里内でシカマルとキリの姿を見かけて、その後をずっとつけていたのは、他でもないこの男。はたけカカシである。
今のシカマルといのの会話どころか、シカマルが必死の思いで、キリをデートに誘ってオッケーを貰い、歓喜するところまで一言一句聞き漏らすこと無く覗いていた。