第76章 これが幸せ
いの(あらあらあら、ちょっとやだ)
お揃い。
そして、色違いのものを身に付けている二人に、いのは口もとに手を当てて、その視線を行ったり来たりとさせる。
シカ(……めんどくせー)
そんないのと、ばっちりと目が合ってしまったシカマルは、好奇心に溢れて目が輝いているいのに、眉を寄せた。
なんだって、女というのはこういう事に目敏く、いち早く気付くのだろうか。
いの「シカマルゥー、ちょっと来なさいよ」
シカ(……いかねぇ方が後で面倒な事になるな)
席を立ち、店の出入り口の方へ移動して、こっちこっちと満面の笑みで手招きをするいのに、シカマルは小さくため息をついて、その後を追った。
二人は、キリ達のテーブルに背を向けて、いのはぐっとシカマルに身を寄せる。
そして、ぼそぼそと声を潜めてはいるが、らんらんとしたいのの声音が聞こえる。
いの(ちょっとシカマル! あんたやるじゃない!!)
シカマルをつんつんと肘でつついて、にやにやと笑みを見せるいの。
シカ(何がだよ)
いの(何がじゃないでしょー、それよそれ!!)
お揃いのアクセサリーなんて、そんな素敵な気回しがシカマルに出来るなんて思っていなかったと。心から感心する。
いの(しかもいいセンスじゃない!)
女の子らしい可愛いデザインではないが、シンプルで上品さがある。
一体いつこんなものを買って、渡していたのだろうか。
シカ(あー、これはキリが選んだんだよ)
いの(!!)
いの「きゃー!やだ!嘘!!」
シカ「っ」
突然耳もとでそう叫ばれて、きーんと耳が痛くなる。
いの(ちょっと! どういうこと!? キリがプレゼントしてくれたってこと!?)
そう言ってから、あ! といのはもう一つの可能性をあげる。
いの(それとも、二人で買いに行ったの!? シカマル! 早く話しなさいよ!!)
詳しく説明しろと、テンションが最高潮のいのに、シカマルは早くも疲れが見える。