第76章 これが幸せ
シカ「付き合うのはいいけどよ、怪我まだ治ってねぇんじゃねーのか」
キリ「大分良くなってるから、大丈夫」
そろそろ動かなくては身体が気持ち悪いらしい。この根っこから自分に厳しい勉強家に、シカマルは苦笑する。
シカマルは休みがあれば、その時間を全てのんびりだらだら過ごす事が出来るのに、不思議なものである。
もともとキリは実力があるにも関わらず、そんな事をするものだから、追いつこうとしているこちらは堪らない。
キリ「はじめは様子を見ながら、調節するわ」
シカ(はじめはってぇと、後からはどうするつもりなんだよ)
絶対に本気でやるつもりだろうと、呆れ顔になるが、まあ。その辺りは、キリが無茶をしないように、シカマルが注意していればいい話だ。
シカ「おう。じゃあ飯の後だな」
キリ「ええ、お願い」
シカ(これもしかしなくても明日……)
約束を取り付けたシカマルは、緩みそうになる頬を精一杯耐える。
シカ(一日一緒じゃねぇか?)
朝、鹿に会いに森へ行って。
昼、一緒にご飯を食べて。
夕方、下手をすれば夜まで、一緒に修業をする事なるだろう。
シカ(……っ)
どうすればいいのだろう。
その事実が嬉しくて堪らない。
一日一緒に居られる事も。
そして、何よりキリとの距離がなくなって、また普通に隣に居られる事が、どこまでも幸せを与えてくれる。
ーーそんな二人のやり取りを、影からジッと覗いている人物がいた事に、シカマルもキリも気付いていなかった。
そして、跡をつけるその影に気付くことのないまま、シカマルたちは目的の人物に遭遇する事となる。