第76章 これが幸せ
ヨシノ「じゃあ、頼んだよ」
それに返事をしたキリの他に、もう一人、この代理に名乗りをあげる者がいた。
シカ「俺も行く」
「どうせ暇だしな」と、腰を上げたシカマルは、キリからひょいっと衣服を取り上げる。
キリ(………)
シカマルが行くのならば、自分は行かなくてもいいのではないかと、疑問符を浮かべていれば、それを読み取ったシカマルは口を開いた。
シカ「一緒に行こうぜ。チョウジも心配してたしよ」
キリ「!」
その誘いに、キリもこくりと頷いて、シカマルの後に続く。
どうやら今回のシカクの件で、キリはたくさんの人に心配をかけてしまったらしい。
チョウジに心配をかけたと伝えた後は、今回本当にお世話になったのに、すれ違いで中々会えていない日向家にも挨拶に行こう。
そう思いながら、キリは見送ってくれた二人にぺこりと頭を下げた。
キリ「いってきます」
ヨシノ.シカク「いってらっしゃい」
家を出たシカマルは、キリと隣を並んで里内を歩く。
ちらりとキリを横目で盗み見た。
シカ(………)
今回、シカクの死を覚悟した時は、みな相当な心労を負ったようだが。
その中で唯一、良い傾向になったものがある。
今回の件で、キリとギクシャクしていたわだかまりが無くなった。
病院での一件以来、キリとはまともに会う機会もなければ、話す時も目に見えてあった距離。
それが、すっかりと影を潜めていた。
ずっと、悩んで塞ぎ込んでいたようなキリも、今は以前同様の明るさを取り戻している。
シカ「……なあキリ」
その声に反応して、こちらを見るキリとの距離は、もう遠くはない。