第76章 これが幸せ
シカ「俺は手首でいい」
足首だと、もし途中で解けたり切れたりすれば気付かないと、シカマルは右手と口を使って、器用にそれを左手首に結んだ。
シカク「母ちゃんが足にするなら、俺もそうするか」
よっと、ヨシノと同じ場所へくくりつけたシカク。
そんな三人を見て、いまだにどうするべきかと悩んでいるキリに、シカマルが歩み寄る。
シカ「お前も手首でいいんじゃねぇか」
キリ「手首……でも手首だと」
戦闘になった時に、大丈夫だろうかと心配するキリに、問題ないとシカマルは告げる。
シカ「それにこういうのは、しまっとくより使ってやった方がいいんじゃねぇの」
傷を付けたくないと、常備しているポーチにしまっておこうと思っていたキリの手が止まる。
キリ「……そういうもの?」
シカ「そういうもんだろ」
ヨシノもシカクも、身に付けているし、そういうものかと。
キリはこくりと頷いた。
シカ「ん、貸してみろ」
「つけてやる」と、キリの石を受け取って、シカマルはキュッと自分と同じ場所に、その紐を結ぶ。
キリ「ありがとう」
シカ「おう」
シカク.ヨシノ「………」
奈良夫妻はいいとして。
しれっと自分と同じところへと結んで、よりお揃い感を叩き上げたシカマルに、シカクとヨシノは呆れたようにアイコンタクトを送り合う。
すると、ヨシノは思い出したように、声を上げた。
ヨシノ「あっ野菜をお裾分けしてもらう時に、渡そうと思ってたの忘れてたよ」
以前、秋道の奥さんに借りた衣服があるようで、ヨシノはしまったと眉を寄せる。
キリ「私が渡して来ましょうか」
先ほど、これから任務があるとヨシノは話していたので、代理を申し出ると、ヨシノは少し申し訳なさそうに笑顔を向ける。
ヨシノ「頼んでもいいかい?」
キリ「はい。朝食、ご馳走様でした」
そんなキリの言葉に、ヨシノは「いつでも食べに来なさい」と笑って、借りていた衣服をキリへ手渡した。