第75章 忠犬
キリ「また3人で……」
そんな場面を今、想像しているのだろう。
キリは考え込むように、少し上を見上げて、停止する。
カカシ(お願いキリ、辛いから。そんな状況きっと辛いから。ほんとお願い)
その恋をどうか諦めないでくれと、カカシは滝汗を流しながら、キリに念を送り続ける。
カカシ「!」
どうやら、シミュレーションを終えたらしいキリと、ぱちりと視線が合った。
平静を装いながらドキドキと心臓を鳴らして、キリからの言葉を待てば、ゆっくりとその唇が開かれる。
カカシ(キリ……!!)
「頼む……!」とカカシは、より一層キリへ強い念を送りつける。
キリ「はい。今なら、ちゃんと笑って話せると思います」
カカシの願い虚しく、無情にも終了の鐘が鳴る。
カカシ「っ……!!」
その鐘の音に、がくりと、カカシは顔を押さえて、その場に膝をついた。
キリ「カカシさん?」
そんな突拍子もないカカシの奇行に、目をぱちくりさせているキリ。
カカシ「そう、か……そっか、キリ……」
キリ「え、と……その、大丈夫ですか?」
ちらりと、キリを見上げれば、やはり晴々としているキリの表情。
彼女は、乗り越えたのだ。
カカシ「良かったね」
内心死にそうなくらいの罪悪感をシカマルに抱えながら、そう告げれば、キリはふわりと微笑んだ。
キリ「ありがとうございます」
…………………………
キリと別れたカカシは、中忍試験の討議のため、本部へと足を運ぶ。
カカシ「……シカマルが一生独身だったら、どうしよう……」
これが、まだ女の子であれば。
責任も取れたかもしれないが。
相手が男だった場合、どのようにしてその責任を取ればいいのか。
カカシ「……シカマル、俺のこと嫁に貰ってくれるかな」
そんな馬鹿な解決策を、本部へ着くまで、ひたすら考えながら歩いていた。