第75章 忠犬
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無事に書類を出し終えて、シカクはキリと並んで、里内を歩く。
ちらりと視線を向けてみれば、鼻歌でも歌いだしそうなキリの姿。
それを見ると、この状況について、どのような言葉をかけるのが適切かが、わからない。
シカク(俺だって、これが嫌なわけじゃあねぇしな)
ヨシノとシカマルには申し訳ないが、むしろ嫌どころか嬉しいぐらいだ。
それに。想像はしていたが、聞けばその想像の何倍もキリはシカクの死に対して、心を痛めていたらしい。
それこそ誇張なく、死ぬほど心配して、死ぬほど後悔したのだろう。
その反動で今、こうなっていて、これほど嬉しそうな姿を見せてくれているのだ。
どうしてそれを、邪険に扱う事が出来ようか。
シカク(それにしても……随分と溜まったもんだな)
これからやるべき仕事をリストアップした紙を見て、その量の多さに、シカクはため息を落とす。
まあしかし、しばらくはリハビリで任務に就く事もない。ゆっくりこなしていくかと、それに目を通していれば、秋風が吹き付けて、ふわりと紙が風に乗って舞っていく。
シカク「おっと」
それを追おうとする前に、それはもう素晴らしい反応速度で、追いかけていくキリ。
キリ「私が行きます」
そう言った時には、すでに飛び出しているキリに、シカクはぽりぽりとこめかみ辺りをかいた。
紙に追いついて、こちらへと戻ってくるキリの他に、知った姿が目に入る。
カカシ「シカクさん、もう出歩いて大丈夫なんですか?」
シカク「おう」