第75章 忠犬
ヨシノ(私だって、キリが家を出てから、キリとあまり話も出来てないんだけどね)
シカ(…………)
シカク(うっ……)
何か手伝える事はないかと、常に近くで待機しているキリの背後からかかる圧力。
ヨシノ(はぁ……前はご飯の後は、こっちに来て一緒に話してくれたってのに……)
シカ(……………)
あまりにも、キリがシカク以外に目を向けない事で、二人の不満が募り始めているのだ。
もともと、キリが家を出て寂しい思いをしている中、シカクだけが第11班の担当上忍として、キリと頻繁に会っていた事もあるのだろう。
ヨシノには愚痴をこぼされて、シカマルに関しては不機嫌オーラを全開に、あまり話をしてくれなくなってしまった。
シカク「……よし、ちょっと報告書でも出してくるかな」
意識を失っている間にたまっていた書類を提出しなくてはと、シカクが重ねられた書類に手を伸ばすと、すっとそれが宙に浮いた。
キリ「私が持ちます」
シカク「……」
なんだろう。
後ろから、ものすごい視線が二つ自分に向けられている気がするが、気のせいだといい。
シカク「いや、俺が自分でーー」
キリ「行きましょう」
そう言って、ふわりと微笑んだキリに、シカクは苦笑い混じりの笑顔を返す。
キリ「いってきます」
ヨシノ「気をつけて行っておいで」
ぺこりと、ヨシノたちにそれを伝えて玄関の方へ向かうキリ。
シカク「シ、シカマルも一緒にどうだ」
シカ「………いい」
この空気に慌てて、シカクはシカマルに誘いを入れてみるが、二階へと上がっていってしまった。
シカク「い、いってきます」
キリのいってきますには、返事があったのに、自分のいってきますには、誰からの返事もなかった。