第75章 忠犬
第75話 忠犬
シカクが、生死を彷徨ったあの騒動が起きてから、早十日が経過した。
目を覚ました翌日には、自宅療養で構わないと、無事退院する事になったシカク。
今日もヨシノの手料理に舌鼓を打って、その腹ごなしがてら、綱手から与えられたリハビリメニューをこなしていた時。
三つの視線が、シカクへ容赦なく刺さる。
シカク「………」
かなりの至近距離から、心なしかきらきらした瞳で、こちらに熱視線を送るキリと。
そんなキリの後ろからは、ジト目を向けてくるヨシノと、機嫌のよろしくなさそうなシカマルの視線。
家を出てからは、奈良家に寄り付かなくなっていたキリが、毎日家に顔を出すようになった。
それは、非常に嬉しい事なのだが。
その中で、ひとつ問題点が浮上する。
シカク「……キリ、その……何か自分の事をしてもいいんだぞ?」
キリ「はい、問題ありません」
シカク「……そうか」
即座に返ってきた、キリからの返事。
そう。
その問題点とは。
シカク(母ちゃんとシカマルの視線が痛ぇ……!)
シカクが退院してからというもの、キリが、シカクにべったりになった。
一緒にいる間は、片時も離れない。
初めの頃こそ、それを微笑ましく見守っていたヨシノとシカマルだったが。
連日続くそれに、二人とも反応が変化してきた。