第74章 失くしたもの
ついに、都合の良い幻聴まで、聞こえてしまったのかと、シカマルは顔を上げる。
シカ「……!」
すると、そこには目を開けて、確かにこちらを見ているシカクの姿。
しっかりと繋がった視線に、シカクの無事を喜ぶよりも先に、言葉を失った。
シカク「なんだその顔は」
口をぽかんと開いて、目もまん丸にしているシカマルに、シカクは目を細める。
シカク「心配かけて悪かったな、シカマル」
ニッと口角を上げて。でも少し、申し訳なさそうに微笑んだシカクに、シカマルはようやく、シカクがここにいる事を実感した。
シカク「っと」
シカ「!!」
シカクが上体を起こそうとするのに、シカマルは慌てて、その手伝いをする。
シカ「起きて大丈夫なのかよ!?」
シカク「おう」
二人がそんなやり取りをしていた時、おそらく様子を見にきたのだろう綱手とシズネが、治療室へ入室する。
綱手.シズネ「!!!」
先ほどのシカマルと同じように、シカクの姿に目を見開いている二人に、シカクは「どうも」と、バツの悪そうな顔を見せる。
綱手「シカク……お前、目が覚めたのか」
シズネ「まさかこんな……信じられません」
今しがた目が覚めたばかりだと、苦笑うシカクは、時刻を確認すると、シカマルに視線を向ける。
シカク「木ノ葉に戻って、どれくらい時間が経った?」
今は一体何日なのかと、問いかけるシカクに今の日付を教えてやれば、シカクは小さく独りごちた。
シカク「……ずっと長い夢を見てた」
シカ「夢?」
シカクはそっと、致命傷となったはずの腹部をなでる。
シカク「身体中、至る所が痛んで仕方なかったんだけどよ」