第74章 失くしたもの
結局、昨日眠りについたシカマルたちは、朝になって帰宅したヨシノに起こされる事になる。
ヨシノが帰宅時に、玄関先に置かれていたヒナタから懇切丁寧な説明と自分達を気遣うメッセージ付きのキリの薬を受け取り。
キリの包帯を変えるのを手伝って。
ヨシノが作ってくれた、朝ご飯を食べて。
また昼になり、夜が訪れる。
当たり前だが、シカクはいなくとも時間は変わらずに、等しく過ぎていく事に酷く苛立った。
シカクが帰還してから2度目の朝が来て、それぞれシカクのいる治療室に訪れて、必ず誰かが常に治療室にいるような形になる。
そして現在は、少しその時の話を聞きたいと綱手に呼び出されたキリに、ヨシノも付き添っていき。
治療室に残ったのはシカマルのみ。
いつ、最期が来てもおかしくないシカクを見つめて、シカマルは小さくこぼした。
シカクは今も、穏やかな表情で眠り続けている。
そこにはもう苦痛が見えない事が、せめてもの救いだった。
シカ「親父……知ってるか。今、家がすげぇ事になってんの」
ヨシノは、変わらない笑顔をシカマルたちに向けて、いつもと同じ気丈な振る舞いで、子供たちを支えようとしている。
それでも、時おり目を赤くして、涙の跡が見えるヨシノの姿。
シカ「母ちゃん……一人で泣いてんのかな」
そんなヨシノの支えになろうとするが、強い母親であるヨシノが、中々それをさせてくれない。
こんな時こそ、しっかり食べなくてはいけないと。
毎食必ず、食事の準備をしてくれるヨシノに、シカマルもキリも通る余裕などまるで無い喉に、無理やり食事を詰め込んだ。