第74章 失くしたもの
きゅっと唇を噛み締めて、キリがそれに堪えていると、ヨシノの声が小さく落とされた。
ヨシノ「父ちゃん……」
その言葉の後にすぐ。
ヨシノの手は、キリからシカクへと移される。
ヨシノ「!」
まだ、あたたかいシカクに、ヨシノは即座にシカクの呼吸と脈を確認する。
そんなヨシノに、キリは躊躇いながらも、口を開いた。
キリ「シカクさん、は……」
続く言葉が、喉でつっかえて、止まる。
キリ「もう、目を覚まさないと……火影様から伝えられました」
ヨシノ「……!!」
キリ「私のチャクラがシカクさんの身体に残っているから、生命が維持されているそうで、それもあと2~3日しか保たないと……」
シカ「2、3日……。キリのチャクラ……?」
非常に部分的なキリからの情報に、疑問符を浮かべるシカマルとヨシノ。
ヨシノ「……何があったか、説明出来るかい?」
そうしてキリの身体を気遣うヨシノに、キリは顔を歪めて頷いて、今回の任務のこと。
その帰りに、大勢の敵に襲われたこと。
長丁場の戦闘に発展したこと。
シカクがキリを庇って負傷したこと。
そして、影陣壁の術を発動させて、キリを守ってくれたこと。
その敵は、キリを捕獲するために襲ってきた敵であったこと。
その全て、言葉を詰まらせながら語るキリの話を、ヨシノとシカマルはひとつひとつ耳を傾ける。
援軍が来るまで、医療忍術を使用したが、それは実のところ蘇生術と呼ばれるものだったこと。
そして、それが……おそらく不充分な術であったこと。
キリがわかっている全てを、話し終えた今。
静寂がこの場を包んだ。
キリ(………)
耐えられなくて落としたくなる視線を、キリはギュッと奥歯を噛んでヨシノ達を見続ける。
キリ「ごめんなさい……、本当に、私……っ」