第74章 失くしたもの
もう大好きだったその姿を、見ることが出来ない。
他の誰でもない自分のせいで。
シカマルとヨシノは、キリのせいでシカクを失ってしまうのだ。
カツンッと、何かが落ちる音がして、キリが音のする方へ視線を落とせば、そこには小さく光り輝く石があった。
キリ「!!!」
キリ(シカクさんのっ……!)
キリのポケットから落ちたそれは、この任務でシカクが買ってくれた宝石で。
シカマルとヨシノと、みんなお揃いで買ったそれなのに、シカクのものだけが床へと落ちた事に、言いようのない焦燥が募る。
キリ「っ……!」
慌てて、キリはそれを拾い上げて、ぎゅっと両手で強く握りしめる。
シカクを失ったシカマルとヨシノは、どんな顔をするのだろうか。
シカクを失って、二人はどれほど深い悲しみに襲われるのだろうか。
十数年。
長い時間シカクと共に過ごした二人が、もう一緒に笑い合う事が出来ないことに、どれだけの喪失感を得るのだろうか。
それを思うと、胸が張り裂けそうな痛みを訴える。
このまま握り潰されるんじゃないか。それほどに痛む胸に、キリは思わず息を詰まらせる。
四人で持つはずだったお揃いのこの宝石。
持ち主に幸運を運んでくれる、最強の守護石だと言われたそれは、シカクの手に渡る事なく終わるのか。
俺の分もキリが選んでくれと告げるシカクに、キリが悩みに悩んでひとつ選び取ると。
これをプレゼントしてくれるのは、シカクの方なのに、ありがとうと笑みを浮かべたシカク。
数日前は笑顔で、そんな会話をしていたのに。