第74章 失くしたもの
キリが生きている事で、一体どれほどの人間が命を落とす結果となったのか。
ギリギリで保たれていたキリの心が欠壊する。
キリ「っあああああああああああ!!」
言葉にならない叫び声が、辺り一帯に響き渡った。
キリの足場が、次々と崩れていくのがわかる。
奈良家のみんなが、好きだった。
シカマルが、ヨシノが、そしてシカクの事が、本当に大好きだった。
その個人個人も勿論好いているが、何よりも、みんなが揃う奈良家が好きだった。
あたたかい……本当にあたたかい家族なのだ。
互いを思いやっている事が見ていてわかる。包む優しさを、見守る優しさを持っている、そんな人たちで。
一緒にいれば、ずっと仲良くお喋りをしているシカクとヨシノは、いつも楽しそうで笑顔に溢れていて。
ふざけるシカクに、それを嗜めるヨシノが呆れて笑っているような、そんな二人の関係が好きだった。
外部に関しては、あまり文句をたれる事のないヨシノが、何か腹を立てる事があれば。うんうんと優しく聞いて、それが聞き上手過ぎて、話しが終わる頃には、ヨシノの苛立ちも何処かへやってしまうシカクが好きだった。
シカクとヨシノに手伝いをさせられれば、めんどくせぇと愚痴をこぼしながらも、なんだかんだと最後までしっかりやるシカマルが好きだった。
普段はめんどくさいと口では言うのに、二人が忙しそうな時は、自ら手伝いにいくシカマルが好きだった。
シカク、シカマル、キリ。誰かが何か思うことがあったり、少し体調が悪いだけで、隠しているのに何故か必ず気付いてしまうヨシノが。
心配して、相談に乗ってくれるヨシノが、好きだった。
シカクとヨシノのように、ずっと話をしているわけではないが、シカクが家で何か作業をしていれば、その近くで本を読んでいるシカマルとシカクの関係が好きだった。
休みの日には、何かするわけでもないが、みんなが居間に集まるこの家族が大好きだった。
好きなところを挙げていけば、いくら時間があっても足りないぐらいに、大切だったのだ。
深い愛情と絆があるこの家族が、本当に大好きだった。
キリ(それを私が……)