第74章 失くしたもの
キリ「じゃあ……」
キリ(シカクさんは……)
シカクは、キリを守って死ぬのではない。
シカクは、キリを狙う敵との戦いに巻き込まれたせいで。
キリのせいで、死ぬのだという答えに行き着いた時。
キリ「嘘……」
ヒナタ「キリちゃん……?」
目眩がした。
今の今まで、気付かなかった自分に吐き気がする。
どうしたのか、大丈夫かと心配そうに顔を覗き込むヒナタに、もう言葉を返す事も出来ない。
キリ「シカクさん!!!!」
勢い良く立ち上がったキリは、シカクの体に縋り付くようにして、どうか目を開けてくれと、その体を揺らす。
キリ「私の、私のせいでっ……ごめんなさいシカクさんごめんなさい」
ヒナタ「キリちゃん!!」
何度も狂ったように謝罪を続けて、シカクの体を揺するキリを落ち着かせようと、ヒナタが無理やりシカクからキリを引き剥がせば、もう余力を残していないキリの体は簡単に離される。
ヒナタ「キリちゃんっ」
キリ「シカクさん……っ、お願いですから目を開けて下さい」
肩に切り込まれた傷が深かったから。敵の攻撃の手は、休む事なく絶えず続いていたから。
自分が敵に生かされていた事に、気付かなかった。
だが、少し考えればすぐにわかるそれを、当時、戦う事だけに集中していた自分が見逃した事実が許せない。
キリ「!」
そしてまた、キリはある真実に気付く。
シカクは、それに気付いていたのではないか。
キリでも気が付くそれに、あのシカクが気付かないわけがない。
キリの瞳から、大粒の涙が次から次へと溢れ出る。
キリ「どうして……!」