• テキストサイズ

ささめごと -ながい夢- 【NARUTO】

第74章 失くしたもの






…………………………



シカクが眠る集中治療室に、バタバタと騒がしい足音が聞こえる。


ヒナタ「キリちゃん!!!」

キリ「……」


部屋の前で佇んで、どこにも焦点が合っていないキリの瞳は、ぼんやりとただ床を見つめていた。


そんなキリに手を伸ばしたヒナタが、キリに触れた時、ようやくキリの視線が動いた。


ヒナタ「っ……」

影を抱えて、あまりにも濃い哀しみを背負ったその瞳に、ヒナタはじわりと視界が滲む。



ヒナタ「キリちゃん」

キリ「ヒナ、タ……?」


キリの瞳が、ゆっくりとヒナタを認識する。


ヒナタ「キリちゃん」

キリ「ヒナタ……」


冷たくなっているキリの手を握れば、キリはおぼつかない足取りで一歩、ヒナタへと歩を進める。


ヒナタ「キリちゃ……っ」

キリ「ヒナタ……っ!!」


ぼたぼたとヒナタの涙が流れたのを見て、それをきっかけに、キリの勢いよく涙が溢れ出した。


キリ「っ、うっ……シカ、クさんが、っ」

ヒナタ「っ……」


ぎゅうっと力いっぱいにキリを抱きしめれば、絶え間なくキリから嗚咽がもれる。


ヒナタ(キリちゃん……っ)


普段のキリとは、まるで異なるその姿。


どうして、天はキリにばかり、こんなに辛い未来を歩ませるのか。

キリがヒナタに、どれだけの優しさとあたたかさをくれたことか。


深い禍根のあった宗家と分家の橋渡しまで、してくれた心優しいキリが。

たくさんの幸せを与えてくれたキリが。


どうして、こんなにも傷付かなくてはならないのか。


それが、ただひたすらに、辛くて悲しくて仕方がなかった。



/ 1018ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp