第73章 願い
怨みがましいシカクの視線を、斜め上を見て無視を決め込むカカシは、後ろで手を組んで鼻歌を歌う。
どうやら、身体を張って止めようとした喧嘩の理由が、こんなにしょうもなかった事への腹いせらしい。
ヒアシ「フッ……」
痛みに悶絶するシカクを見て、ざまあみろと内心で大笑いをしているヒアシに、シカクはジト目を向ける。
そんなヒアシのもとへ、近づく人影。
ゴンッ
ヒアシ「っ~!?!?」
生まれて初めて、自らの頭上に落とされたゲンコツ。そんなヒアシの視界に、ちかちかと星が舞う。
ヨシノ「ヒアシさん! あんたも同罪です!」
「こんな公共のど真ん中で! 大暴れなんて~~」と、その後、こんこんと長いお説教をヨシノから頂いて。
話し合いの結果、平和的に決着をつけろと、何故か将棋で勝敗を決めることになった。
ヒアシは将棋のルールは知っているものの、そこまで嗜んでいるわけでもなく。
現在、17戦17敗という不名誉極まりない戦歴が残されている。
聞けば、シカクは将棋を長らく嗜んでいるようで、不平を感じて勝負方法を見直しを申し出たが、それはヨシノによって上手いこと丸め込まれた。
今思えば、キリを巡って争いを起こしていたため、ヨシノは第三者の中立なフリをして、シカクに有利な条件をさらりと提示していたのだが。
それからというもの、仕方がないので時間があれば将棋の本を読んだり、使用人や門下生を相手に将棋を指しているのだ。
なんのために努力していると思っているのか。次に勝つのは自分なのだから。
ヒアシ「勝ち逃げは許さん」
「だから早く目を覚ませ」と、そう言って、ヒアシはさらに木ノ葉への帰還を急いだ。