第73章 願い
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そうして帰路を走り始めて、丸一日が経過した頃。
しばらくそれぞれの息遣いしか聞こえていなかったそこに、カツユの声が響いた。
カツユ「……近付いて下さい。移動します」
ヒアシ.ネジ「「!!」」
ついに、シカクの命が途切れてしまったのかと、ヒアシとネジの間にある空気が固まる。
木ノ葉隠れに戻るまでは、あと二日といったところ。
出来ることなら、生きて木ノ葉に連れ帰りたかったが、それは叶わぬ事なのかと、ヒアシとネジがより一層厳しい表情を見せた時、キリに連れ添っていたカツユが言葉を落とした。
カツユ「キリさんの治療の必要がなくなりました。私もそちらに合流します」
ヒアシ「!」
ネジ「それは……キリは、もう大丈夫だということですか」
カツユ「はい。蘇生術を行っていた時は、チャクラの流れも精神的にも不安定でしたが。キリさんが眠りについてからは、すぐに自身の回復に切り替えられていました」
カツユ(薬による強制的な身体能力の引き上げ……話は聞いていましたが、まさかここまでとは)
意識を失ってからというもの、チャクラ、細胞、その全てがキリの身体の再生に向けて動いていた。
一切無駄がない体内の動きに、綱手がキリへは下手に治療を施すよりも、チャクラを分け与えてキリに任せる方が早いと言っていたのを理解する。
キリの身体から、シカクの身体へと移動したカツユに、ヒアシが問いかける。
ヒアシ「シカクの里への生還率は如何程か」
カツユ「想像よりも耐えてくれていますが……生還率0%には変わりません」
ヒアシ「……」
そう即答するカツユに、ヒアシは後ろ隣にいるネジとキリへ視線を向ける。