第73章 願い
カツユ「嘘はついていません」
キリに連れ添うカツユが、今現在、綱手から分け与えられ続けているチャクラを流し込む。
カツユ「ですが、仮に騙したとしても。あのままでは、キリさんを動かす事は出来ませんから」
チャクラ枯渇の他にも骨折、腱の断裂、火傷に深い切り傷。
キリの身体を、調べてわかった負傷箇所の多さには、驚かされた。
カツユ「二人とも失うか、一人が助かるか。後者を選んだまでのこと」
そう言って、カツユはちらりとキリへ視線を向ける。
シカクの傷は、拙い治療ではあったが塞がっていた。
カツユ(サクラさんから、キリさんの医療忍術の技術はナルトくんレベルだと聞いていましたが……)
カツユ「……キリさんが先ほど行っていたのは、傷を治すための医療忍術ではありません」
それでは一体なんだというのだと、視線を向けてきたネジに、カツユは淡々と返していく。
カツユ「これは蘇生術に近い」
カツユ(滅茶苦茶な方法ではありますが……)
ヒアシ「蘇生術……」
ヒアシ(まさかこの年齢でそれを……)
カツユ「本当に、必死だったのでしょう」
医療忍術の、最高等に位置する蘇生術。
それを綱手が、キリに教えたことはない。
綱手に弟子入りしたサクラでも、蘇生術を教わるのは、まだまだ先の話だ。
それをキリは、やり方も何も知らぬまま、ただ本能で、シカクという生命体を維持しようとした。
決して少量とは言えないキリのチャクラを送り続け、シカクのチャクラと繋げて、無理やり命を繋げるような荒治療。
カツユ(治すというよりは……死なせない方法、でしょうか)