第73章 願い
申し訳なさそうに顔をしかめて、ネジの背中に乗ったキリ。
ヒアシはそんなキリの首すじに、トンッと手刀を落とした。
ヒアシ「キリ、お前は少し休んでいなさい」
そのままこてんと意識を手離したキリの頭を、ポンッと一度、小さくなでてやる。
ヒアシ「よく耐えてくれた」
ヒアシ(……遅くなってすまなかった)
合流するまでの間、キリがどんな気持ちでシカクの隣に居たのかと、その心労は計り知れず、心が痛む。
ヒアシ「ネジ、少し飛ばすぞ」
ネジ「はい、ヒアシ様」
地面を蹴った二人は、木ノ葉隠れへと帰還を急いだ。
…………………………
ネジ(……)
一度、背負っているキリの意識の有無を確認して、ネジは口を開いた。
ネジ「カツユ殿」
カツユ「はい」
手のひら大の1個体であったカツユは、今は6つに分裂し、シカクの腹部へ2箇所。胸部に2箇所、心臓の上に1箇所。
残り1つがキリに連れ添っている。
ネジ「……助かる可能性は、どの程度あるのでしょうか」
ネジがシカクの様子を見た時、止まっていると思った呼吸は、よくよく注意すれば、確かに僅かながらだがされていた。
だが。
絶命していると見間違うほどのこの状態からの回復、また木ノ葉へ帰還するまでの時間。
それを考えれば、シカクの生還は相当困難なことではないのか。
そう慮るネジに、カツユの言葉はすぐに返された。
カツユ「ありません」
ネジ「!!」
カツユ「今生きているのが不思議なほどです。ここからの回復はまず不可能でしょう」
ネジ「そんな……!」
それでは、キリがあまりにも……そんな考えが巡るネジに、カツユは続ける。