第73章 願い
暴れるキリに、ネジはギュッと強くキリの両手を握る。
ネジ「お前はよくやった。もう充分だ」
援護が来るまでの間。
キリがどれほど必死で、シカクの命を救おうとしていたのかは、ここに来てほんの数分で、充分に見てとれた。
そして、今のキリの気持ちも痛い程に伝わる。
だがしかし。
シカクが死してなお、何故こんな結界を残したのかといえば、理由はただ一つ。キリを守るためだろう。
そんなシカク決死の策を、キリがシカクを救うためにと命を削れば、本末転倒だ。
キリ「シカクさん!」
悲痛な声を上げるキリに、心臓が締めつけられるように痛みを訴えて、ネジは一度顔を大きく顰めて、キリを見据える。
ネジ(点穴で……)
キリの体のチャクラ排出口を塞いで、無理やりにでもチャクラを使えない状態にするべきかと、再び白眼を発動した時。
シカクに近付く小さな姿があった。
『生きています』
キリ.ネジ「!!」
そう言葉を落としたのは、手のひら大ほどの大きさのナメクジ。
シカクのそばまで来たそれは、じっとシカクに視線を落とす。
『かろうじて……というところですが、彼はまだ生きています』
そこへ、少し呼吸を乱したヒアシもまた、シカクのそばへと腰を下ろした。
ヒアシ「カツユ殿、如何か」
ネジ「ヒアシ様! 敵は……」
ヒアシ「退却をはかられた。だが今は此方が先決だ」
この長丁場な戦いと、シカクとキリによって、相当な打撃を喰らっていたのだろう敵群は、戦闘中に口寄せを用いて退却を試みた。
それでも追えば幾人かは捕らえる事が出来たであろうが、捕虜を木ノ葉隠れの里まで連れ帰る労力と、今の状況を天秤にかければ、それは瑣末なこと。
今、最も優先すべきことは決まっている。