第73章 願い
ネジ「っ……キリ、残念だが……」
「もう亡くなっている」と、眉を落としてそう伝えれば、キリは反応を示すことなく、シカクへチャクラを流し続ける。
キリ「はっ、は……」
ネジ「!」
隣にいるキリから、不規則で小さな呼吸音が聞こえる。
もはやキリが意識を正常に保てていないことに気が付いて、ネジはキリの肩を掴んだ。
ネジ「もう止めろ! それ以上はお前の命にも関わる」
それはシカクも望んでいないことだと告げても、微動だにしないキリの姿に、ネジは少々強引に肩を引いた。
キリ「!!」
以前、戦った時のキリの力強さは何処へやら。
まるで力の入っていない体は、ネジに引かれた勢いのままペタリと尻餅をついた。
キリ「……、あ……?」
時間差で、ようやくネジと焦点が合ったキリの体を支えてやれば、ぐらりとキリの瞳が揺れる。
キリ「っ、う」
顔を背けて、咳き込むキリは嘔吐しようとするが、中身のない胃袋からは何も出せるものがないようで、ただ苦しげに嘔吐くだけに終わる。
そっとその背をなでてやれば、キリは咳込みながらも、シカクに視線を向ける。
キリ「シカ、クさんは……!」
横たわるシカクの姿を一瞥し、憔悴しきったキリの瞳がネジへと移される。
縋るようなその瞳に、ネジは眉根を寄せてゆっくりと首を振れば、キリの目がまん丸に開かれる。
キリ「あ……シカクさ、シカクさん!!!」
バッとシカクの体に縋りつき、震える手で再びチャクラを流しはじめたキリに、ネジは奥歯を噛み締めて、それを制止する。
ネジ「止めろ! これ以上チャクラを使うのは危険過ぎる!!」
キリの両腕を掴んでシカクの体から離してやれば、余力などまるで残されていないその体で必死に抵抗を見せるキリの姿に、心が酷く痛んだ。
キリ「お願い離して」
シカクさん、と何度も名前を叫ぶキリの瞳からは、大粒の涙が溢れ出る。