第72章 選択
キリ「シカクさん! シカクさん!!」
キリ(まだ……!)
シカクの首すじに手を当てれば、弱々しくはあるが、どくどくと脈打つのを感じる。
キリ「どうすれば……っ」
どうするのがいいのか。何が最善か考えろと。
嫌な汗がふきだして早鐘状態の鼓動を、無理やりにでも押さえ込んで、キリは必死で考えを巡らせる。
キリ(援軍が来るまで、あと1日はとても待っていられない)
1日も経たずということは、20時間前後であろうか。
そんなに悠長に構えていれば、間違いなくシカクは事切れてしまうだろう。
キリ(私がシカクさんを担いで、援軍のところまで近付けば……)
互いに近付けば、距離も時間も半分になる。
この結界もシカクを中心に張られているらしいので、シカクごと移動するとなれば、問題ないだろう。
キリ(でも、シカクさんが耐えられるかどうか……)
もちろん丁寧に、振動にも極力気を付けて運びはするが、それでもそれなりの衝撃はあるだろう。
それに、半分になっても合流までは約10時間ある。その時間シカクが頑張ってくれるかどうかを考えれば、確率はかなり低いだろう。
キリ(じゃあ……私、が)
とにかく、この出血を止めなくては話しにならない。
それを今の状態でやるには、道がひとつしか残されていないではないか。
キリ(医療、忍術で……?)