第72章 選択
『くそっ、おい! 結界に詳しいやつは前に出ろ!!』
先ほどから何度か攻撃や解術を試みるが、敵は苦い顔を見せるだけに終わる。
『これは……五大性質変化ではなく一族に伝わる秘伝忍術の類です。私達では手が出せません』
そう言って結界の周りを囲む敵群を見て、シカクはギュッとキリの手をつかむ力を強める。
シカク(まだ敵は多いが……援軍はあいつだからな。心配ねぇだろう)
後のことを任せるには、充分過ぎる助っ人にが来る。シカクは胸をなでおろす事が出来た。
そんな穏やかな心中のシカクに反して、顔面蒼白なキリの顔を見て、シカクは困ったように微笑みを浮かべる。
キリ「シカクさ、シカクさん……っ、すみません。私の、私のせいで」
シカク「馬鹿言うな。目の前でお前がいなくなったら、死んでも死にきれねぇよ」
キリ「シカクさ……っ」
じわりと目いっぱいに涙を滲ませるキリに、シカクはキリの頭へ手を伸ばした。
シカク「キリ、頼むからよ。そんな顔しないでくれ」
サラリとしたキリの髪が、心地良くて、もうこうやってキリの頭をなでてやる事も出来ないのかと思えば、寂しさを感じた。
シカク「かはっ……」
また、どぷりと吐き出された血液。キリはシカクの体を仰向けに寝かせる。
キリ「失礼します」
クナイで、シカクの胸部から腹部にかけて忍服を切ると、先ほど貫通された傷口が露わになる。
そこにキリは医療パックから、止血の薬を取り出して、患部へ塗りつけていくが。
キリ「っ……」
薬を塗ったそばから、溢れ出る血に流されていくそれに、ギュッと奥歯を噛み締める。
シカク「ってて……。随分とやられちまったもんだな。……キリ」