第72章 選択
突如、シカクを囲んで、直径2メートルほどのドーム型で現れた影に、キリの視界は薄暗くなる。
そこに仕掛けてきた敵の攻撃は、影によって阻まれ、跳ね返された。
『くそっ、防御結界か……!!』
近付くことすらままならなくなった敵は、不愉快そうに顔を歪ませて、さらに攻撃を試みる。
シカク「ぐっ、ごほっ」
咳き込むシカクの口からは、大量の血が吐き出され、シカクはドサリと膝をついた。
キリ「シカクさん!!」
そのまま横たわったシカクは、目線だけをキリへと向ける。
シカク(キリ、悪いな……血を流し過ぎたか……)
肌寒く感じる体と、少しぼんやりとしてきた意識の中で、シカクはそっとキリへ手を伸ばした。
シカク「キリ」
キリ「!」
それに気付いたキリは、すぐにシカクの手を両手で包み込んだ。
シカク「いいか。あと1日も経たずに援軍が来る。それまで俺のそばを離れるな」
キリ「シカクさん……っ」
シカク「この結界は特殊なもんでな。1日しか保たねぇが、俺の意識が途切れたところで消えはしねぇ。あいつらもこの中にはどうやっても入ってこれねぇから、中にいる限りは安心だ」
援軍が来るまでの時間は保つように、チャクラを練り込んだと告げるシカクは優しい微笑みを見せる。
そんなシカクの微笑みに対して、キリの手は小刻みに震え始めた。
キリ「いし……きが」
途切れても。
それが表す意味を理解してしまって、キリは思わず呼吸をするのを忘れる。