第71章 真っ向勝負
もうキリは限界だろう。
ふるふると震える手で握る刀は、握力などとっくに無くしているようで、今にも落下しそうな程に、か弱い。
対する敵は、残すところあと9人。
ここまで、時間をかけるつもりはなかった。
そして、長期戦は不可能だと思っていた。
もって数時間、その間に勝負をつけるつもりだったが。
敵の中でも、格が違う者が3人いた。
シカク(キリがここまで踏ん張ってくれたってのに、情けねぇ)
その3人を押し切ることが出来ずに、それどころか、敵に半分以上折られた肋骨。シカクも呼吸をすることすら困難になってきた。
もって数時間だと推測していたそれを、半日以上戦い抜いたキリ。
これ以上ないぐらい良い意味で予想を裏切ってくれた教え子に対して、誤算だったのは自らの能力不足だ。
実のところ、倒すどころかキリのもとへ行かぬよう押さえるのが精一杯だったと言ってもいい。
キリ.シカク「!!」
自分たちを挟むようにして、迫り来る敵に、シカク達はそれを受け止める。
シカク(ぐっ……!)
ミシミシと軋む肋骨に、顔を歪めながらも、シカクはその攻撃を跳ね返し、追撃を試みる。
対して、真正面から攻めて来た敵に、綺麗な受けの型をとっていたはずのキリの体が、宙に浮く。
キリ(っ、足がもう……っ!)
まるで踏ん張りが効かぬ足は、簡単に地面から離れてしまった。
シカク「キリ!!」
即座にキリの後を追って、シカクはそれを弾き落とすが、落としきれなかった2本がシカクの右足と左腕を捕らえた。
シカク「チィッ」
『殺せ』
キリ「シカクさん!!」
シカクの姿を見て、がくがくと揺れる足を叱咤して、キリはシカクのもとへと駆け戻る。
シカク「がはっ……!!」
キリ「!!!」
あと数歩。
たった数歩で、辿り着けるシカクのもとに。
先に到着したのは、敵の刃だった。