第71章 真っ向勝負
…………………………
ぼとぼとと、キリの汗がしたたり落ちる。
戦いが始まってしばらく。
戦況は逼迫を極めていた。
キリ「ぐっ、かはっ!!」
敵の攻撃は見えていても、体がそれに追い付かなくなったキリはついに、敵からのクリティカルヒットが入る。
その隙を向こうが逃してくれるはずもなく。
入れ替わり立ち替わりに囲まれて、連打を浴び続けるキリは、なす術もなくそれを受け入れるしかなかった。
シカク「キリ!!」
即座に反応したシカクが、援護に行こうとすれば、それを阻むように敵が目の前へ立ち塞がる。
『止めろ! 行かせるな!』
『ああ』
『俺が行く』
ずらりと目の前に並ぶ敵群を、シカクの眼光が射抜く。
シカク「影縫いの術•黒彼岸花!!」
一帯に咲いた影の花に、敵は捕縛され動きを止める。
『!!!』
シカク「なめるなよ、若僧」
立ち塞がった敵二人の間を抜ける際に、トンッと手刀を入れて意識を奪い、シカクはキリのもとへと急ぐ。
キリに捕縛ワイヤーをかけようとしていた敵に、黒彼岸花を咲かせば、それは空振りに終わる。
シカク「チッ」
しかし敵が影を避けたことで、開いた空間。
シカクはそこに飛び込むと、キリの体を抱き起こした。
シカク「キリ!! しっかりしろ!」
キリ「っ、すみません……っ」
シカク「馬鹿言うな充分過ぎる」
本当に、キリは十二分に戦ってくれた。
この人数を相手に、ここまで半日以上戦い続けてくれたのだ。
一体どこに謝る必要があるというのか。
シカク「キリ、俺のそばから離れるな」
キリ「はい……っ」
支えるキリの体から、バクバクと鼓動の大きさが伝わってくる。