第71章 真っ向勝負
…………………………
キリ「っ……!」
キリが攻めようと足を踏み飲んだ瞬間、敵からカウンターをもらう。
チッとキリの頬を掠めた切っ先。薄く切れた肌からは、真っ赤な血が垂れた。
一体今日何度、こんなやり取りが交わされただろうか。
キリ(本当に……戦いにくい)
どうやらいま対峙している敵は、キリの戦闘スタイルに全くもって合っていないらしい。
あと一つ攻めたい、まだここから押したい。
そんなタイミングでことごとく外されてしまうか、カウンターをもらってしまう。
敵の呼吸がキリには読み難いのに、こちらの呼吸は読み取れるようで。
また、キリは近距離戦を得意としているし、中距離戦も対応出来るといえば出来るが。
こちらの最大の武器は、慣れ親しんだこの刀である。
それに対して、向こうはリーチの短いクナイやナックル。
又、ロック•リーのような武器を持たない戦闘法を用いている。
複数いる敵に囲まれた、刀を使う最適な間合いよりもずっと内側に敵がいるため、その本領を発揮出来ない。
体術全般に長けてはいるが、ここ一番で自分の得意技で戦えないのは、かなりの痛手であった。
キリ(………)
そして、また宜しくないことに、キリが苦手とする動きやタイミングが、向こうにより正確に伝わってきているようで。
ぜぇぜぇと呼吸を乱し、反応速度に遅れが見え始めたキリに対して、まるで嫌味の塊かとでもいうような不得手とする攻撃が繰り出される。
勢いを増した敵勢力に、キリは小さく言葉を落とした。
キリ「……ごめんなさい」
確かに、戦いにくさでいえば、過去最大であるのかもしれない。
キリ(……こんなところでは、終わらない)
『!?』
突如、戦闘スタイルをガラリと変えたキリに、敵の攻撃の流れが乱れた。