第71章 真っ向勝負
この状況下で戦うしかないことを、まだ幼いキリに伝えるには、心苦しくて、その言葉は喉もとでつっかえる。
キリ「シカクさん」
キリの言葉に視線を上げれば、キリはくるりと回したクナイを両手に構える。
シカク(キリ……)
逃げろと伝えた先ほどとは、打って変わった表情。
やる気満々だとでも言うように、わざと挑戦的な視線を向けてくるキリに、シカクはつい笑みをこぼした。
シカク(普通、さっきと今とじゃ表情が逆だろうが)
そんなキリの態度に、迷いをなくしたシカクは「よし!」とキリにこぶしを突き出した。
シカク「キリ、今からは戦闘になる」
そんなシカクのこぶしに、キリも同じように握りこぶしを作って、返答と共に、こつんと真正面からこぶしを合わせる。
キリ「はい」
シカク「お前もわかってるだろうが正直言って、俺たちの勝率はかなり低い。敵の残りの数は17だ」
シカクとキリは、今度は互いに、そのこぶしを横から合わせる。
キリ「はい」
シカク「だが、その可能性はゼロじゃねぇ。援軍が来るまで、必ず耐え抜くぞ!!!」
互いのこぶしの位置を入れ替えて、最後にもう一度、二人はポンッとこぶしを合わせる。
キリ「はい!」
シカク「キリ、お前はもう忍として充分な実力がある。守りは考えるな。全部俺に任せろ。お前は、向かってくる敵を叩き潰してやれ」
「はい」と、キリが力強く返答をしたのを最後に、シカクとキリは、すでにその姿が見え始めている敵に向かって、同時に地面を蹴った。