第70章 我が師
シカクの攻撃をもろに食らった敵が、意識を手放したのが見えた。
さらに、片割れを失った敵は、シカクと一対一で戦うには力不足で、瞬く間に決着がついた。
そこに到着するのが、右手からの援軍だ。
しかし寸刻到着が遅れた敵もまた、一人での交戦を余儀なくされたが、それはシカクによって、初撃で仕留められる。
ほんのひと呼吸の間に、一掃された敵達。
美しいと讃えても過分ではないぐらいのシカクの流れに、キリは大きな安堵と共に、自らが血沸くのを感じる。
キリ(シカクさん……!)
敵を討ち破り、こちらへと駆けてくる姿に鳥肌が立つほどの尊敬と、気を抜けば泣いてしまいそうなほどの安心感が込み上げてくる。
小さくなっていたシカクの姿が、すぐに大きくなり、そしてキリの隣へと並んだ時。
シカクから、ごつんと頭を小突かれる。
シカク「こら何ちんたら走ってんだ」
キリ「シカクさん……っ」
ぎゅっと眉を寄せて、シカクを見上げれば、シカクは困ったような笑みを浮かべた。
シカク「なんだその顔は。俺がやられるとでも思ったか?」
キリ「~~~~っ」
はっはっはと余裕たっぷりに笑うシカクに、キリの目尻には涙が滲む。
シカク「そんなに心配だったか、悪かったな」
「だが、あの程度の敵にやられる俺じゃねぇ」と、口角を上げたシカクに、キリがこくこくと何度も頷いて返せば、シカクは笑い声を上げながらポンっとキリの頭に手を置いた。
シカク「よし、キリ追っ手が来る前に援軍と合流するぞ! 付いて来い!!」
キリ「はい!!」