第70章 我が師
最短距離を一直線に駆けるシカクとキリは、ついに敵の姿をとらえる。
真正面に二人、左手に一人、右手には少し離れたところに一人。
シカク(ここで時間はかけれねぇ……)
正面二人のもとへ特攻したシカクと敵のクナイが、激しく火花を散らした。
その少し後方から、キリは敵の攻撃の手がシカクへと届かぬよう、クナイを放り、敵の手数を減らす。
キリ(っ!)
印を組み始めた敵に、キリも土遁の印を組み上げ、地面に手をついた。
『水遁・鉄砲玉!!』
キリ「土遁・土流壁」
パァァンッと激しい衝突音が耳をついた。
シカクに放たれた水遁の術は、敵との間に出来た土の壁に阻まれる。
キリ「シカクさん!」
シカク「ああ、使わせてもらう」
シカクはくるりと身を翻す。キリの作り出した壁を背にして、敵と向かい合った。
これで背後から襲われることがなくなったシカクは、両手にクナイを構えた。
シカク(一気に畳む……!)
激しい金属音が鳴り響いている一方、左手にいた敵はシカクに目をくれず、キリに迫り来る。
キリ(……二メートル五十)
シカクの方へと、飛び道具での援護を行いながら、キリは敵との間合いをはかる。
キリ(あと、九十……三十……)
『っ!!』
ゼロになると同時に、抜刀すれば、キリの刀は敵の太ももを深く抉る。
キリ「!」
しかし、そこで敵の戦意が落ちることはなく、体勢を崩しながらも放たれた手刀がキリの頭をかすめた。
キリ「くっ……」
ほんの少しかすめたそれが、キリの脳を揺らして、ぐらりと視界が歪んだ。
キリ(あの体勢から……強い……!)